映画『ラ・ラ・ランド』感想 ※ネタバレあり

ラ・ラ・ランドの感想を書きたいがためだけにブログを開設してしまいました。

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【公開前の印象】

CMではカラフルなドレスを纏った女の子たちがパーティーに行ったり、なんかハイウェイで車の上に人乗っちゃって激しく踊り狂ってたり、楽しそうにタップダンスをしている映像が流れ、

これはめっちゃハッピーなミュージカル映画ですよアピールがすごいですよね。

 

だってもうタイトルが『ララランド』って。が3つもついちゃってるもん。そんなもんむじんくん以来だよ(古い)

まぁこんな浮かれたタイトルだしとにかく絶対ハッピー映画に決まってる。(と、人に思わせる)

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まぁなんてカラフル。楽しそう。

 

だけどご覧になった方はもちろんご存知。

この映画はメリーバッドエンド映画です。(恋愛映画として観ればね)

まぁ、ハッピーエンドでもあるけど・・・うん・・・ホロ苦・・・ホロ苦すぎて口の中がじゃりじゃりしてくるくらいほろ苦いよ・・・

 (ぶっちゃけCMのイメージのあっけらかんと明るく楽しい曲も最初の3曲くらい)

 

 

 【完全に二分化する感想】

私はこの映画が大好きです。

映画館で観終わってエンドロールが始まっても滝のような涙が止め処なく溢れ出て動けないという事態に見舞われました。

 

しかし一緒に観た友達が言い放った言葉はこちら。

 

 

『は?なんだこれ』

 

『途中で寝ちゃったんだけど。』

 

 そしてそれに対する私の反応はこちら。

 

 

『わかる。』

 

 

泣いたくせに。感動して大号泣してるくせに。

 

 

でもわかる。

内容ははっきり言って「こんなにベタでいいのか?」ってくらいありきたりでつまらない、ありがちな夢追う二人の恋とすれ違いと破局

うんうん、こういう映画100万回観たYO!!

 

ではなぜ大号泣組とつまんね組に分かれるのか。

それはひとえに、ラストの幻想シーンのエモみのビッグウェーブに乗れたかどうかである。と、私は考えます。

 

 

 

【ララランドの構成と似ていると感じる映画】

 

 

少し話が脱線しますが、見終わった時に真っ先に思った事がこれです。

 

 

これ『ビッグフィッシュ』と作りが似てない!!??

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なんかいきなり知らない映画が出てきたーーーと思った人ごめんね。

『ビッグフィッシュ』は、ティムバートン監督、ユアンマクレガー主演のファンタジー映画なんだけど、これまたララランドと同じくらい評価が賛否両論。

 

 

 

ララランドとの共通点を話すために簡単にあらすじを言うと、

なんでもかんでも話を盛って大げさに話す年老いた父親とそれにうんざりしている息子の話なんだけど、ほぼ全編通してその父親の半生(ほぼホラ話)を映像化したファンタジー小咄みたいな物を見せられるんですよ。

でもラストでその一つ一つのお話というか『映像』が一つにつながって感動を呼び起こす。

 

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ティムバートンが監督なだけあって、色彩豊かな絵本のような話が短編集のように次々と出てきてまぁ観てて楽しいっちゃ楽しいんだけど、観てる最中は『で?』っていう感じなんですよ。

 

ただでさえファンタジーが嫌いな人なんかは特に、途中で観るのを辞めたくなるくらい苦痛かもしれない。

 

でもその短編集は全部、最後の最後に語られる壮大な一つのおとぎ話の伏線に過ぎない。

なんなら全編に渡ってラストのためのプロローグをやってるに過ぎない。

(もちろんティムバートンの世界観やファンタジー要素、絵本のように美しい映像は最高だし、好きな人は全編通して充分楽しめるよ!)

 

 【ラストが琴線に触れるかどうかで評価が分かれる映画】

 

はい。話はララランドに戻ります。

 

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長々とビッグフィッシュの話をして何が言いたかったかと申しますと、ストーリーやジャンルは全く異なれど、2つの映画に共通して言える事は、

・理屈抜きでラストシーンが刺さるか否かにかかっている

・そこに至るまでの本編で、いかにシーン毎の美しさを自分の中で拾い集められるかが感動への鍵になる

・だからそもそもそのジャンル(ミュージカル、もしくはファンタジー)が苦手なら無理かもしれん

・大事なのはストーリーよりもエモーショナルの波に身を投じられるかどうか

 

という事です。

 『理屈抜き』という所が、ララランドではより重要かもしれない。

だってそうしないと

おーーーい結婚してんのかーーーい!!!!

とか

子供もいんのかーーーーい!!!!!!

とか

結局妄想して終わりかーーーーい!!!!

 

と後半のツッコミが大変忙しくなってしまいます。

 

 

いきなりタップダンス始まるんかーーーーい!!!!!

いや空飛ぶんかーーーい!!!!

 等のツッコミが止まらなかった人には「ミュージカル映画ってそうなんだ・・・ごめん・・・」としか言えない。(ごめん)(車の上にも乗っちゃ駄目だよね)(ごめん)

 

 

 

【結局ララランドって何がいいのよ】

 

まぁ何って言われたらまず誰しもが思う

映像と音楽の美しさですよね。


ミュージカル映画のオマージュがたくさん盛り込まれたりと、とにかく綺麗でおしゃれ。曲も映画を観終わって即サントラ購入したレベルで最高だけど、

でもそれは誰でも素晴らしいと思う部分ではあるので、ここでは多くは語るまい。

 

ぶっちゃけストーリーはありきたりでつまらない。『ふーん・・・良かったね。でもなんだか切ないね』で終わる感想。

ララランドの良さはクライマックスの幻想シーン(エピローグ)に尽きる。

 

 

 

 【ラスト8分間のifのストーリー】

二人はこのまま別れちゃうの?え…?結婚して子供もいんの…?二人共成功してる状態で再会したけどどうなっちゃうの?復縁するの?とそわそわしてる所に、懐かしのあのメロディーと共にいっきなり始まる回想シーン

 

 本編では恋が始まるまでわりとモタモタしていた二人だが、まるでその無駄な時間を惜しむかのように冒頭でいきなりの熱いキス。レストランの怖いハゲがにこやかに扉を開けてくれて、二人は幻想の世界に飛び出します。

最初こそ『え????なんだこれ???今までの全部夢オチ???』と混乱したものの

 

『あ・・・これが「夢」やんけ・・・』

と気づいた瞬間、涙がドッパーーーン

 

出会ってすぐにセブが話を遮るようにキスをした瞬間は、曲の盛り上がり効果も相まってその後何度見返しても号泣のトリガーになりました。

どうせこの後深く愛し合うのがわかってるのだから、無駄な時間は一切必要ないとでも言いたげでね。だいたいハゲにクビ宣告されてイラついてなかったら、ここで一言二言会話を交わしていい感じになってたかもしれないし。この恋の結末を知ってるからこそ早く、一刻も早く楽しくて幸せな時間を始めたいよね…セブ…

 

ifのストーリーとは書いたが、二人共決して道を誤ってもいないし、なんなら大成功してるわけだから選択肢を間違えたわけでもないので、この幻想シーンは所謂タラレバ話とは若干異なる。

 

この映画には登場しなかった『二人のもう一つの人生』を、本編よりさらに鮮やかに美しく描いたショートムービーを私たち観客は最初からもう一度観させられるのである。

こんな残酷な事ってある?

 

幻想の中の二人は、何もかもが上手くいく。妄想だからこそ、カラフルで楽しくて、先程プロローグみたいなもんだ言い放った今までの思い出が宝物のようにキラキラと輝き出し、存在しなかった未来は悲しくも優しく二人の後悔を癒やす。

 

5年後の世界になってからのミアとセブの心情が語られるシーンは一切無かったけれど、終わった恋に感じている後悔や違った結末の空想をこんなにも素晴らしい映像として二人で思い描けた事によって、そこに絶望や悲しみは無く、胸にほんの少し残っている痛みを癒やす事が出来たんだねと、感じる事が出来ました。

 

そう思えたのは映像の美しさによる力がかなりでかい。ただただ美しかった。

ここまで美しく妄想されたらもうグゥの音も出ないというか。

 

最後に、『お互いよく頑張ったね。』と称え合うように微笑みかける二人にもやっぱり言葉は無かったけど、この先ずっと胸に生き続ける愛はあったとしても、この瞬間に二人の関係性は完全に終わったんだと伝わって泣けた。前向きになれたんだね。

 

つらい。

 

誰しもが抱える過去の恋愛に対する未練や後悔を、夢と現実を混じえた超絶綺麗な映像でえぐってきてつらい。

 


【まとめ】

あっけらかんと明るく楽しいハッピー恋愛ミュージカルを観るぞー!という気持ちで映画館に来て、オープニングのハイウェイの圧巻ダンスシーンで『わーー!!最高ー!!!!』とテンションが天までブチ上がるも、最終的に『これで…いいんだよね…?二人は、幸せになったし…これでいい、うん、これでいいんだよ…』などとブツブツ言いながら昂ぶってしまった気持ちが空中浮遊したまま着地出来ないで終わる。

だから、観終わった後もモヤモヤしてしばらくグルグルと自問自答やら美しい映像や音楽のフラッシュバックが起こりずっと余韻が残る映画。


二人が出会い恋に落ち、影響を与え合い、お互いの背中を押す形でそれぞれの道に進み夢を実現させた。でも、それは『二人一緒に』ではなかった。

これをハッピーエンドと言い切るには少しモヤるけど、多分あれでもしラストシーンで二人が抱き合って復縁してしまったらなんかうっすーーーい映画になってしまったと思うし、監督が描きたかったのはそういうのじゃなかったんでしょうね。

だからより復縁をより『無い』物にするために、ラストはヒロインを子持ちの既婚者にしたのかな。


観た人のその時の状況によって抱く感想が違う物になりそうな映画だけど、結婚して一児の母となった今の私にはなかなか刺さる内容でありました。


幸せだけど。


幸せだけどね。




 

【おまけ】【怖いハゲについて】  

ララランドの監督はあの『セッション』のチャゼル。

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セッションを観た人なら条件反射で震え上がるこの怖いハゲがなんとララランドにも出てきますね。

レストランのオーナー役で!!

監督のお気に入りのハゲなの!?ねぇこわい!!

 

 

でも安心してください。カウント取ってビンタしてきたりしません。

私は出てきた瞬間に『ヒッ!!』と言ってしまいましたが、誰もぶん殴られず楽器も壊れませんでした。安心してください。

 

なんならエピローグで笑顔で扉を開けた瞬間に『いやこのハゲがこんな事するわけないからこれは夢だな』とすぐ気付けました。ありがとうハゲ。怖い。